第1回 UZUME(うずめ)のホームページにようこそ(春山純一)

2007年に打ち上げられた月探査機SELENE(かぐや)は、月に直径・深さ共に数10mにも及ぶ縦孔を発見しました。画像データから、この縦孔は、地下の巨大な空洞に開いたものであることがわかっています。地下の空洞は、地球上の類推から、たとえば、富士山麓に見られるような「溶岩チューブ」といった、火山活動、あるいは地殻運動に関係しできたものであると考えられています。

隕石落下の危険に曝され、放射線が降り注ぎ、そしてまた温度も-150℃から120℃まで変化をするような月面に比べて、月の縦孔・地下空洞内は大変安全なところであり、将来、我々人類が恒久的な活動拠点(月面基地)を建設する上で、この上も無く適したところと考えられます。

一方基地建設の観点だけでなく、縦孔・地下空洞多くの科学の課題を解決するための鍵があるということからも、月の縦孔・地下空洞は、非常に重要です。例えば、縦孔の壁に見られる層構造は溶岩の流れた層の積み重ねで、私達に月の火山活動、すなわち月の内部の変化の歴史を、たどらせてくれます。地下空洞の内部に至れば、空洞の壁や床の岩には、月がかつて持っていた水やガスの名残が見つかるかもしれません。

縦孔・地下空洞は、火星にもあることがわかっています。火星に人類が到達したとき、月と同様、有力な基地候補となります。また、生命探査の重要なターゲット場所になるでしょう。火星の表面は、月同様、紫外線が降り注いでいます。そこに生命の痕跡を見つけるのは、かなり確率が低いといえます。一方、火星の地下の空洞には紫外線も放射線も到達しません。かつては、そして今も、地下空洞内は液体の水が流れやすいところでしょう。空洞の中は火山起源の熱で暖かかったことは間違い有りません。火星の地下の空洞の様々な条件を考えると、遙かなる太古、いえ、更には今現在でも、生命がいるかもしれません。それも、様々な生態系を作っているような。

月そして火星の縦孔・地下空洞こそは、今後の月火星探査における重要なターゲットなのです。しかし、探査をするには困難は多いです。縦孔の周りは漏斗上の坂が取り囲み、垂直の壁がそそり立っています。縦孔の底は砂が覆っているでしょうが、その所々に、かつて天井や壁だったところから落ちてきた岩が散在しています。縦孔の底に続く地下空洞は、ほとんど真っ暗で未知な領域です。

こうした、極限環境とも言える場所を探査する技術が求められます。私達は、まだそのような技術を持っていません。そこで、まず技術実証を行い、そして将来、様々な科学探査・活動拠点作りを目指す計画を開始しました。

この計画を私達は、UZUME(うずめ)計画と呼んでいます。 UZUMEは、Unprecedented Zipangu Underworld of the Moon Exploration (古今未曾有[ここんみぞう]の日本の月地下世界探査)の略です。またウズメとは、古事記や日本書紀に出てくる女神様です。ウズメは、天照大神が天の岩戸に隠れこの世から光りが失われた際、踊りを踊って大神を誘い出し、世に光を取り戻しました。

UZUME計画では、月や惑星あるいは生命のことを調べる理学研究者、探査を可能にするための工学者はもちろん、将来の月面基地建設、人類の活動拠点の拡大を目指す上でも様々な分野の方々に入っていただきたいと望んでいます。是非、一緒に、月を、そしてその先を目指しませんか?

春山純一