第3回 プロローグ3

溶岩チューブが作られれば、チューブ内を溶岩が通ることになり、溶岩が月表面を扇形に広がって流れるより、より遠くまで流れていくことになるでしょう。月の海は、とても広く拡がっています。もしかしたら、こうした溶岩チューブができたことが、この広大な海の広がりに一役買ったのかもしれません。また、チューブの中を詳しく調べれば、溶岩の噴出時期、噴出量、噴出率などが分かるでしょう。溶岩チューブというのは、月の大地の形成を知るためにも、とても重要な科学調査対象なのです。

科学的な興味以外に、昔から月探査関係者の間で、月に溶岩チューブがあるのではないかと、とても期待されていました。その理由は、溶岩チューブがもし月にもできていれば、そここそは、まさに月基地として最適であると考えらる、ということからでした。

月の上に直径数10kmものクレータを作るような隕石衝突は、今ではほとんど無い、と考えられていますが、小さなクレータを作るような隕石は、もちろん、今でも降ってきています。地球は大気に覆われているので、多くの隕石は大気に突入してくると、大気との摩擦でスピードはどんどん遅くなり、また、融けて小さくなり、その多くは燃え尽き、結局、地上に落ちてくるのは、ほんのわずかな割合のみとなります。しかし、月には大気がありません。宇宙に存在する隕石が、月面にそのまま、降ってきます。

また、月は、地球と違って、約2週間の昼と、約2週間の夜がそれぞれ続きます。大気が無いために、月面の温度の変化も激しいものとなります。日が昇り始めると、温度はどんどん上昇し高温となり、また日が暮れた途端に温度は急激に減り非常な低温の時間を迎えるのです。赤道域では日中は100℃を超え、夜間には-150℃を下回るほどにもなります。

月の上が大変なのは、そればかりではありません。人間が月に活動領域の場を広げていくのに、大きな難関となるのは、それは、放射線です。