第9回 「月の縦孔探査かるた」でアウトリーチ(新井真由美)

 こんにちは、新井真由美と申します。

 春山先生率いる月の縦孔探査のプロジェクト(UZUME)のアウトリーチを担当しています。今からさかのぼること4年前、2010年のこと。「月と火星の縦孔・溶岩チューブ探査研究会」という何やら怪しげな研究会が、その年12月にJAXA/宇宙研で開催されることを知りました。火星にセブンシスターズという愛称がついた穴がUSGS(アメリカ地質調査所)によって、以前発見されていたのを思い出しました。
 その穴は地下に続く洞くつの開口部(天窓)であろうということ。そして穴の中は、まだ誰も見たことも探査したこともないとのこと。”あな”の中はどのような世界が広がっており、どの程度まで分かっているのだろうか?もしかしたら、原始的な生命を育むような条件があるかもしれない。―私はこの研究会に参加して、”あな世界”について詳しく知りたいと思いました。そして、火星のみならず、月にも”あな”があったこと、その”あな”は日本の富士山やハワイにもある縦孔と似たような構造であることを知りました。

 しかも発見したのは、日本の月周回衛星かぐやの科学者チームの春山純一先生。

 月の”あな”は、月基地として最適な構造・環境を兼ねそろえていました。春山先生をはじめ、多くの研究者が、日本が世界で最初に発見した月の縦孔をまずは探査しようと地道に努力をしています。私は、月の縦孔ももちろん興味深いですが、火星の縦孔にも興味があります。ですが、まずは、日本が見つけた月の”あな”を他国に先を越させる前に探査したい!そしてその次に火星の”あな”探査につなげていけるといいのではないかと考えています。
 UZUME計画が何としてでも成功するよう、アウトリーチで盛り上げていきたいと案を練りました。その第1弾が「月の縦孔探査かるた」という科学コミュニケーションツールの開発です。子供から大人まで、説明しなくても日本人なら誰でもルールが分かる”かるた”という単純なツールを用いて、この「月(と火星)の縦孔探査」にちなんだ44の読札と絵札を研究会の有志で作りました。短い読札のなかにキーワードと重要なメッセージが込められており、絵札には、パッと見て伝わる写真やイラストを用いています。2014年、10月に完成したこのカルタは、翌11月、12月と子供向けのサイエンスフェスティバルに出展し、高い満足度を得ています。単なるカルタ大会ではなく、カルタのプレイの前に、3分のミニレクチャーを行うことで、「あなの利用方法」や「月の表面とあなの環境の違い」について、しっかり子供たちが理解してくれたことが、アンケートの中に混ぜ込んだミニテストで示されました。今後も、かるた大会を通じて、月と火星の”あな世界”の魅力を子供から大人まで多くの方々に伝えていきたいと考えています。

月の縦孔探査かるた公式ホームページ

アウトリーチ担当 新井真由美