第11回 縦孔ジオラマでアウトリーチ(山田竜也)

 はじめまして、アウトリーチを担当している山田です。
 初めて春山氏とお会いしたのは2010年の4月。所属している宇宙作家クラブの例会で「かぐやの地形カメラによる様々な発見」についての説明をしていただいた時でした。なかなか面白い話で印象に残っていたのですが、まさかその後、ここまでのお付き合いになろうとは、当時は想像もしておらず。
 同じ年の12月に「月と火星の縦孔・溶岩チューブ研究会」が始まり、そこでアウトリーチの話をして以来、気が付くとUZUMEのアウトリーチ担当になっていました。

 アウトリーチは「誰をターゲットに行うのか」を考えるのが大変難しいものです。おとな相手なのか、こども相手なのか。一般市民を対象にするのか、宇宙マニアやファンが相手か、それとも政治家や官僚を相手に行うのか。この難しさは本業の教材開発や、天文教室などの講演で実感していることでもあります。

 そんな中で、様々な層に向けて展開できる機会が、昨年の「宇宙博2014」でした。宇宙博の話が回ってきたのは、開催の1年くらい前のこと。そこから主催団体へ、縦孔を知ってもらうための様々な展示物を提案し、その中からジオラマの製作が決定しました。
 このジオラマの設計は大変でした。孔の大きさを実感してもらうだけでなく、断面も見せたい。地下空洞の中がどうなっているかも見せたい。探査の様子も、将来の利用イメージも見せたい。やりたいことを盛り込むために、最終的には幅2.7m、奥行き1m、高さ0.7mというサイズ、1/100スケールということになりました。
 製作対象にしたのは最初に発見されたマリウスヒルの縦孔です。直径約50mの孔ですので、ジオラマ上は50cmほど。孔の深さ51cm。
 地下空洞の天井までの高さは、最も高いところで19cm。長さは分かりませんが、幅は120cmくらいはあるという前提で作ります。その断面形状や床、天井の質感は、富士山麓にある溶岩チューブであるコウモリ穴や富岳風穴の天井や床を参考にしました。
 縦孔周辺や断面の様子、そして孔の底は、「かぐや」やLROの撮影データを参考にしました。ただし、撮影された枚数がそう多くはありませんので、そこは想像と、地球の例だとこんな感じになっている、というのを考慮しています。

 そこに探査機や、将来の月基地を置きます。着陸機はH2AまたはBで打ち上げ可能だろうと考えられる、4m程度の大きさ。これは「かぐや」とほぼ同じ大きさです。そこに探査ローバーが載っているという想定にしました。
 月基地は直径5mの円筒形を組み合わせたものにしました。「きぼう」よりも直径で1m大きい感じです。月表面とはエレベーターでのアクセスを行い、その電力は基地で使う分も含めて太陽光発電で得ます。地球との通信を行うアンテナも設置しました。スケールが分かるように、人物のミニチュアも置きました。

 解説なしの単体で置かれているとわかりにくいジオラマでしたが、8月中旬以降はUZUMEチームのメンバーが張り付いて解説を行ってくれたおかげで、人気スポットになっていた様でした。私も最終日に解説者として参加しましたが、常にお客さんがいる状態。ジオラマ設計者として、大変ありがたく、純粋に嬉しかったです。詳しい人間だと認識されたようで、向かいの宇宙エレベーターの展示を解説することになったのも、今となっては良い思い出です(笑)。

 今はこども向けにカルタ大会を行っているUZUMEのアウトリーチですが、次の展開を考えなくてはいけないタイミングになっています。さて、次は何を仕掛けるか。是非楽しみにして下さい。

(山田竜也)