第12回 国民に感動と誇りを与えられるような新しい宇宙探査を実現させる(西堀俊幸)

 UZUME ミッションで探査用センサの検討を担当している西堀です。宜しくお願いします。

 実は月の縦孔を発見した春山さんとは宇宙科学研究所の学生だったころからの知り合いです。当時、春山さんたち宇宙研の学生でチームを組み、私が代表で第1回衛星設計コンテスト(現在は第22回を数える)に応募し、最終審査会に出場したことがありました。審査の後、審査委員との談話会の場があり、その場で春山さんが学生との懇親会が開催されないことについて審査委員長へ嚙みつかれた事を今でも良く覚えています。意見があれば誰にでも必ず突っ込む春山さんの勇気あるスタイルは昔も今も変わりません。UZUME ミッションの検討以前には、月にも存在すると考えられている溶岩トンネルを電波で見つけるために地中レーダの準備研究を春山さんと10年近く続けていました。UZUME ミッションには宇宙探査の技術イノベーションが隠れていることに魅力を感じ、私も検討チームに加わりました。

 小惑星探査機「はやぶさ」は国民と探査機が見事に融合した素晴らしいミッションでした。探査機のトラブル、行方不明からの生還と奇跡的な地球への帰還。「はやぶさ」の大冒険を国民と共有し、その感動を世界が目撃することになったわけです。

 今、日本の宇宙探査は大きな岐路を迎えています。国際宇宙探査、有人探査など、今まで日本の宇宙科学で扱っていないものを取り入れる動きが見られます。これまで日本の宇宙開発は、海外より少ない予算で、独自の技術やアイデアを取り入れ、大きな成果あげるのがお家芸だったはずです。これからも日本は個性ある宇宙開発の道を歩むべきでしょう。

 科学成果も重要ですが、宇宙探査では特に無人探査機を駆使して行う「冒険」を国民とともに共有することが必要です。私は、無人探査機が行う「冒険」を通して、国民に感動と誇りを与えたいと思っています。

 私たちの活動が目指す UZUME ミッションは、惑星表面の探査から地下へ、無人宇宙探査の手法を前進させる画期的なミッションです。月の縦孔探査では、日本が持つ世界最先端のロボット技術を生かし、多足歩行ロボットによる無人探査が実現するでしょう。外から事前に情報を得ることが出来ない宇宙の未踏地域に日本が探査ロボットを送り込み、ロボットが行う「冒険」を通じて、有人宇宙飛行に負けず劣らず国民は興奮する事でしょう。

(西堀俊幸)