第15回 縦孔へ向かってホール・イン・ワン:球型ロボットの開発(石上玄也)

「UZUMEの人々」をごらんの皆さま,こんにちは,慶應義塾大学の石上と申します.月や火星の表面を移動して探査するロボットの研究を主軸に,様々な極限環境で使えるロボット技術を目指して日々研究開発をしております.

私が,月の縦孔探査の具体的なお話について,春山先生をはじめとした研究者の方々と打ち合わせしたのは,当時JAXAで働いていた頃の2012年の11月でした(河野さんがUZUMEという名称を提案されたのもその直後だったと思います).その後いろいろな探査手法を検討するうえで,「縦孔にロボットを投げ込もう」という野心的なOさんやAさんの投擲(とうてき)試験装置をつくばで拝見し,その投擲挙動の興味深さから,「縦孔に投げこまれる観測ロボットを作ってみよう!!」というモチベーションがふつふつと沸いてきました.その後,2013年から球型の全方向観測ロボットを学生とともに開発しています.

この球型ロボットに課せられるタスクとしては,投擲装置によって長距離を飛翔して縦孔に落下・潜入すること,内部に着陸後も周囲の観測をしつつ,可能であれば移動すること,月面の温度に耐えられること,などなど,一筋縄ではいかないことがほとんどです.2015年現在では,ロボット技術を駆使して,飛翔中・降下中のロボットの姿勢・観測の同時制御を実証するに至っています.今年度は,フィールド試験に赴いて,斜面を転がり落ちる球型ロボットのデモンストレーションを計画しています.

最初に縦孔に入るロボットは,どんな形をしたものなのか?人型なのか?車輪型なのか?はたまた球型なのか?そして,そのロボットが見せてくれる縦孔の内部はどのような様相なのか?今,世界各国で縦孔の探査が検討されている中で,我々の球型ロボットの独自性や優位性を示してミッション提案に臨みたいと思っています.